アマゾンブランド登録に標準文字商標の登録が要求される件について

アマゾンのブランド登録をご存知でしょうか。これは、アマゾン内で、アマゾンが独自にブランドを登録・管理する制度です。


ブランド登録の意義については後述します。ブランド登録をするには、上記ページから申請をします。申請があると、アマゾンはそれを審査して、基準に達すると判断されれば、無事にブランド登録となります。(なお、既存の著名ブランドは、申請をせずともアマゾン自身が登録していると思われます)。


さて、最近ブランド登録の審査基準(登録要件)が変更され、「標準文字の商標登録が完了していること」が必要となりました(おそらく平成29年5月1日以降)。



特に中国から商品を輸入してアマゾンで販売する方々(以下、中国輸入業者)から、この件についての問い合わせが多く、正直なところ通常業務に影響が出ており困っているので、最初にそれについて書きます。

アマゾンブランド登録をすると、出品に際してJANコードが不要であったり、商品カタログの編集権限を独占できたりというメリットがあるようで、中国輸入業者にとってもブランド登録は重要なようです(この点については詳しくないので業界の人に相談してください)。

で、問い合わせが多いのが、過去に商標登録をしたが、標準文字商標の登録が必要だとして、ブランド登録できなかった、どうすればいいか?、あるいは既にブランド登録をしているが、ブランド登録の要件の変更にどう対応すればいいか?というものが大半です。前者は、アマゾンに申請をしたが拒否されたということなのでしょう。中にはその「過去の登録」を弊所で行っていないにもかかわらず、こういう問い合わせをしてくる人がいて、便利屋か何かと勘違いしているんじゃないかと思うんですが、私は弁理士です。非常識な人に無料で対応する趣味はありませんので念のためご留意ください(こんなことを書かないといけないくらい非常識な人が多いんです、ほんと)。

結論から言いますと、過去の出願・登録がない場合、あるいは出願・登録があっても商標が標準文字でない場合は、出願し直してください(新たに標準文字の出願をしてください)。それしか方法はありません。特に過去の出願(審査継続中)や登録(登録済み)がある方は、それを標準文字に変更するとか、その内容を追加するとかできないかとお尋ねになるんですが、できません。商標の内容は、一度出願したらいじれないと思ってください。他の選択肢を検討するだけ時間の無駄ですし、弊所にお問い合せいただいても「出願し直してください」としか答えようがないので、お互い無駄なやり取りは省略しましょう。

過去の商標登録が標準文字かどうかを判断するのは簡単で、公報(公開公報あるいは登録公報(商標公報))に「標準文字」の記載があれば標準文字商標ですし、なければ標準文字商標ではありません。



もちろん、J-PlatPatでも確認できます(「標準文字」の記載を探してみてください。)

念のために、標準文字制度の説明をしておきますと、これは、商標が文字商標(文字のみからなる商標)であって、明朝体やゴシック体などの標準的な書体を権利範囲(専用権の範囲)とするときは、書体や文字デザインを特定せずに、「標準文字」として登録できる制度です(詳細はこちら)。

以下の図は必ずしも正確ではありませんが、文脈上標準文字制度を理解していただくのに十分だと思います。



で、なぜアマゾンがブランド登録に標準文字商標の登録を要求するようになったかですが、おそらく最も主な理由は、ブランド名の重複を避けるためだと思われます。これまでは、ブランド登録には商標登録が要求されていなかったので、ある意味早い者勝ちで登録されていました。そうすると、本来のブランドオーナーでない者が先にそのブランドをアマゾンで登録してしまったり、偶然ブランド名が重複してしまうというトラブルがあったのだと思います。

そこで、商標登録により真のブランドオーナーであることを確認しようという話になったのではないでしょうか。アマゾンが資料提供などを求めて積極的に判断するのではなく、その判断は商標制度を利用して行おうということだと思われます。なんとも合理主義のアマゾンらしいやり方です。

さらに、なぜ標準文字なのか(ロゴや飾り文字ではいけないのか)というと、これもおそらく、ブランドの重複を避けるためです。例えば、あるブランド名について、飾り文字と標準文字(あるいは「図形+文字」の商標と標準文字)が、それぞれ他人に登録されることは、ありえます。そのような場合、やはりアマゾン内でブランドの重複が問題になります。そこでアマゾンでは、その重複の有無の確認も、商標制度を利用して行うことにしたものと思われます。重複する標準文字商標は登録されないはずですから、「標準文字商標が登録されているならアマゾンブランド登録もできる」とすれば、アマゾンは実質的な判断をせずに、ブランドの重複登録を避けることができます。

上記はあくまでも推測ですが、おそらく正しいでしょう。「この件についてアマゾン・ジャパンに問い合わせたが的を射た回答を得られなかった」と言う方がいますが、当たり前です。なぜならば、このルールは、他のそれらと同様に、米アマゾンから輸入されているからです。



法制度の差異により多少日本のものと規定ぶりが異なりますが、ざっくりとは同じことが要求されています。標準文字の商標登録が必須で、あるならば実際に使用しているロゴ等も出せと言っています。

そしてこれは、日本にだけでなく、世界中のアマゾンに輸出されているルールです。標準文字制度がない国もあり(例えば中国)、それぞれ多少異なる表現となっていますが、だいたい同じような内容が要求されています。なので、この件でアマゾン・ジャパンにいくら文句を言っても、あしらわれるだけでしょう。おとなしく標準文字の出願を急ぐのが吉です。

なお、過去にロゴやロゴと文字のセットで商標登録して、現在ブランド登録しているが、規約変更を期に標準文字商標を追加で登録するべきか、という問い合わせも多いのですが、上述のように、した方がいいです。一般論としては、先の登録があれば、同じ文字列で他人が標準文字商標を登録できる可能性は低いので、あまりリスクはないかもしれませんが、絶対にないとは言い切れません。また、他人がその文字部分にのみ類似する商標を登録できる場合もあるでしょうし、それを根拠に貴社が文字部分のみを標準文字で登録できないケースも出てくるかもしれません。こういうリスクを排除するには、自社で標準文字商標を登録しておく必要があります。アマゾンはブランド登録自体をやり直せと言っているので、今後標準文字商標の登録が必須になる可能性が高いです。登録までに半年程度かかることを考えると、やはり早めに出願をしておいたほうが、今後の活動に有利となるでしょう。(そもそもアマゾンを離れて、そのブランドを育てていこうとするのであれば、ロゴに加えて標準文字商標も登録しておくのは、一般的なブランド戦略においても重要です。)

さて、ここからは一般の企業様(主にメーカー)向けの話です。

アマゾンブランド登録の意義は、以下にあります。

  1. 商品カタログ(商品ページ)の編集権限を持てる。
  2. JANコードがなくても出品できる
  3. 同一ブランドの商品の商品ページをリスト表示できる
  4. 商品検索機能が強化される
  5. ブランド保護が強化される

順に見ていくと、1は、要は単に貴社商品を仕入れて販売する業者に、商品ページを編集されることを防ぎ、正規の販社にその管理を任せることができるというメリットがあります。2はメーカーの方には特に関係ないでしょう。3は、商品ページ上でブランド名をクリックすると、そのブランド名で出品されている商品の一覧を表示させることができます。もしここに、貴社商品以外の商品が出てくるようならば、模倣品の可能性があります。4については、いまのところ内容を把握できていません。

5は、アマゾンにおける模倣品排除において重要です。アマゾンに知的財産権(特に商標権)侵害の申し立てをする際に、ブランド登録されている商標ならば、排除がよりスムーズになります。具体的には、ブランド登録されている商標についての申し立ては、原則として真正なものであるとして、アマゾンはほぼ右から左に削除してくれます(ちなみに申し立ては商標権者あるいはその代理人しかできません)。ヤフーや楽天なども、著名なブランドについては、そうでないものと比べてよりスムーズな排除方法を提供していますが、アマゾンのブランド登録はそれらに対応する制度だと考えてよいでしょう。
また、ブランド登録をすると、模倣品発見のツールがアマゾンから提供されるようです。これについては、日本でも提供されているかを含めて詳細が不明なので、情報収集をして、改めてお知らせします。

結論としては、アマゾンにて貴社ブランドが登録されていないならば、早めに登録をしたほうがよいでしょう。標準文字商標の登録がまだならば、まずはこれを急いでください。米国では、ブランド登録を活用して、大規模な模倣品排除に成功している事例があるようです。ブランド登録自体には費用がかかりませんので、積極的に活用されることをお勧めします。
※ ブランドが登録されているかどうかは、アマゾン内でそのブランド名を検索してみれば(商品ページを見てみれば)わかります。



最後に、標準文字で出願する際の注意点について、これはブランド登録する名称と完全に一致している必要があります。大文字小文字の区別も必要ですし、複数の語からなる場合はちゃんとスペースをあけておくことも必要です。「・」は「ー」も正確に記載しましょう。
※ なお、標準文字ではハイフンは登録できないので、マイナスなどで代用することになりますが、さすがにそこまではみないでしょう。また、アルファベットはすべて全角での登録になります。

例)
ブランド登録したい名称
KOSHIBA-IP

商標登録(標準文字)
○ KOSHIBAーIP
× KoshibaーIP
× KOSHIBA IP
× KOSHIBAIP

弊所ではアマゾンブランド登録の代理/代行は行っていませんが、ご不明点があれば、お気軽にお問い合せください。(ただし中国輸入業者の「標準文字で出願した方がいいですか/出願し直す必要がありますか」という問い合わせはもう勘弁してください。答えは「出願しないとブランド登録できません」です。)

最後に余談ですが、アマゾンが標準文字商標の登録を要求する理由は説明しましたが、根底には、よくわからない自称ブランドが乱立している問題があるのだと思います。自称「OEM」、あるいは開き直って「簡易OEM」などと意味不明の呼び方をすることも多いようですが、中国でパクリ商品を見つけて、あるいはそれを少しだけ改造して、自分のロゴを付して「オリジナル商品」「オリジナルブランド」と名乗る図々しい商品が、米アマゾンで(もちろん日本でも)氾濫しています。アマゾンは、そうした商品はノーブランド品として売ってくれと言っているんですが、カタログを独占したいというだけの理由で適当に改造したり商標を付したりして、オリジナル商品のフリをする輩には困っているようです(一方で営業部ではそういう商売を煽っているようで、これがまた混乱を呼ぶ原因になっているようなのですが・・・)。

また別の話ですが、ブランド登録のための商標登録をするときに、指定商品は小売等役務(第35類)でよいのか?という問い合わせもチラホラあります。これは、以前当ブログでもご紹介したとおり、個別の商品を複数指定して区分数が増えると費用がかさんでしまうので、すべてを「○○の小売・・・」として、第35類にまとめて列挙したいという需要があるからです。
この点については、規約変更されたばかりでまだ事例がなく、よくわかりません。商品に商標を付して商品のブランドとして登録するわけですから、常識で考えれば個別の商品を指定すべきで、小売等役務について商標登録をするなど意味がわからないのですが、アマゾンはそこまで判断しないかもしれません。
弊所では、小売等役務を指定して出願しろとのご指示があれば従いますが、ブランド登録のためにそのような出願をすることは、お勧めしません。半年後に商標登録が完了しても、ブランド登録できないリスクがあることをご承知おきいただいた上でご指示ください。また、「35類でもいいんですか?」という問い合わせももうカンベンしていただきたいです。上記のとおりわからないので、アマゾンに直接確認してください。繰り返しますが常識的には個別の商品について登録すべきです。

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知財業界の職業病 – 弁理士の日記念ブログイベント2017

すっかりごぶさたしてしまってすみません。実は今日(7月1日)は弁理士の日だそうで、ブロガー弁理士で記事を書いて盛り上がろうというイベントに、去年に引き続いて参加させていただくことになりました。今年のテーマは「知財業界の職業病」。ふむー何があるでしょう?

知財業界といってもそれなりに裾野が広いので、いろいろな職業病があると思われますが、たしかに「火曜日はなぜか早起きしてしまう」みたいなものはあるかもしれません。火曜日というのは、多くの事務所で特許庁からの通知を受領する日なんですよね。例えば審査官からの拒絶理由通知書や登録査定書などは毎日発せられるわけですが、ほとんどの特許事務所では、これを週に一度だけ受領する運用としています。その間はオンラインにデータが蓄積されていて、一週間分をまとめてダウンロードするわけです。

事務所によって月曜日だったり火曜日だったりするようですが、弊所では火曜日に受領しています。かつて噂レベルで聞いた話では、月曜日に受領すると、応答期限が土日にかかって月曜日に延長される確率が一番高いんだとか。なので月曜日受領の事務所も多いはずです。ではなぜ火曜日なのかというと、よくわからないのですが、月曜日は週末に届いたメールなどの処理が忙しいからその翌日としているとか、かつて書類が郵送されていた時代は火曜日に発送だったとかの事情があるのかもしれません。

まぁそんなこんなで火曜日は特許事務所にとって一週間で特別な日なのですが、私は早起きすることはなく、拒絶理由通知が届くので朝からどんよりした気分になります(笑)

他にはそうですね、いろいろなネーミングやデザインを目にしたときに、法的な問題を検討してしまう習慣があります。

例えば新しいブランドを見たときに、そのブランド(名)が選択された理由を考えてしまったり、他のブランドの商標権を侵害しないか心配になってしまったり、ちゃんと商標登録されているか(されているならどんな指定商品についてか)つい調べてしまったりします。

同じような話で、「PANASONIC」は「SONY」に憧れて「SONI」が入る名称を選んだ、みたいな都市伝説に妙に食いついてしまったりします。

このブログでも繰り返しお話していますが、知的財産法はすべての模倣を排除しようとしているわけでは決してありません。むしろ模倣は人類の経済的・文化的発展の根幹であることを前提としていて、その中で政策的な観点から特に排除すべき模倣に限って許さないとしています。そうすると、事業活動の中で、ある模倣が許されるかどうかの判断が難しいことは、よくあります。おそらく、具体的な出願のものを除けば、弊所へのご相談で最も多いのがこの内容です。

例えば最近は、ブランド名ではなく、商品デザインが模倣されるのが主流です。ネットで売られているわかりやすい偽物(ヴィトンやシャネルの典型的なニセモノ)のほとんどは、日本語ができる中国人や韓国人によるものです。日本人はそういう行為は危険だとわかっているので、ブランドはパクりません。代わりに商品デザインをパクるのです。売れている商品を探し出し、そのデザインの特徴をパクって、商標を付さずに、あるいは独自のブランドで売る。現在メーカーが直面している模倣品問題は、ノーブランドの形態模倣です。

実際にネットでも、リアル店舗でも、どこかで見たことがあるデザインの商品が別のブランドで売られていることは、もはや日常です。そのような商品を目にしたとき、権利関係が気になって仕方ありません。適当にパクって怒られたらやめればいいと考えているのか、きちんと調査した上でギリギリセーフのラインを狙っているのか、ライセンスなどを受けているのか、そもそも何も考えていないのか。法的な問題を検討したり、権利者や製造者の情報をつい調べてしまうのは、職業病といえるかもしれません。
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JASRAC vs 音楽教室 の件について少し考えてみる

JASRACが音楽教室に著作物利用料請求する方針を発表して、世間は盛り上がっています。いろいろな意見が出ており、簡単には解決しなそうなので、少しだけ論点を整理してみたいと思います。

この問題はまず、音楽教室での演奏が著作権法上の「演奏(実演)」に当たるかどうかが問題なわけです。

もし演奏に当たらないなら、さすがのJASRACも利用料を請求することはできません。

逆にもし演奏に当たるなら、音楽教室は利用料を払わないとは言えないでしょう。

それでは結局演奏に当たるのかどうかについては、ドンピシャの判例・裁判例がないため、よくわからないわけです。

条文を見れば、音楽を「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として」演奏するには著作権者の許諾が必要(著22条)となっており、「公衆」には「特定かつ多数の者を含む」(著2条5項)とされています。この定義をみても、音楽教室の生徒さんが「公衆」に該当するかは微妙で、JASRACの請求に合理性があるかは、よくわかりません。

更には、仮に演奏に該当するとしても、著作権が制限される場合に該当するかの検討も必要です。演奏権については、

  1. 営利を目的とせず
  2. 聴衆又は観衆から料金を受けず
  3. 実演家に対し報酬が支払われない
のすべてを満たす場合には、著作権が及ばないことになっています。(まぁしかし、有料の音楽教室では、これはいずれも満たすことはできないでしょう。)
音楽教室での演奏が著作権法上の「演奏」に該当するかについては、かなり昔から両者の間で意見対立があったようで、「音楽教育を守る会」なる団体がいきなり設立されたのも、十分な準備期間があったからでしょう。以下の記事などでは「守る会側がJASRACを訴える」と煽り気味に書いてありますが、まだ利用料が請求されていない段階なので、請求の妥当性を争うことはできません。あるとしても、音楽教室での演奏が著作権法上の演奏に該当しないこと(JASRACに対する債務が不存在であること)の確認訴訟を提起するくらいでしょう。



これで白黒つけば本件は解決しそうなものですが、そうは簡単にいかなそうです。仮に「演奏に該当する」と判断された場合でも、音楽教室側が反発しそうだからです。

音楽教室側はずっと「音楽教育に悪影響を与える」と言っています。すなわち、仮に著作権侵害でも利用料の請求は免除されるべき、という趣旨の主張をしていると思われます。これを日本という国で認めますかという問題があるわけです。

この点については様々な意見があるでしょうが、例えば学習塾が教材をコピーしまくっても、教育目的だから許されるかというと、それは受け入れられない人が多いでしょう。出版社は教材を買ってくれというはずです。日本では、教育目的であることは、著作物の利用の免罪符とはなりません。適切な利用料を支払えば利用することができるという形でバランスをとっているからです。学習塾での複製と音楽教室での演奏の違いはどこにあるのか?という問いに、音楽教室側は答えていく必要があるでしょう。

今回、JASRACが提案する利用料は、受講料の2.5%だそうです。この数字の妥当性はかなり慎重に検討されるべきですが、仮にこの数字が採用された場合でも、例えば受講料(月謝)が5000円の場合に、著作物利用料は、月間125円(年間1500円)です。これが受講料に上乗せされたとしても、それを理由に音楽教育から離れないといけない人は、ほとんどいないでしょう。

音楽教育を受ける人の中には、将来社会に対して音楽を提供する立場になる人も当然いるはずです。そうした人たちが自分の著作物に対する利用料をちゃんと請求できるようになるために、自分が利用するものについては、利用料をちゃんと支払う経験をさせることが、より音楽教育に資するという考え方もできるかもしれません(もちろん著作権法上の根拠がある場合のみです)。
ただし、そもそも演奏権は、コンサートなどでたくさんの人に演奏を聞かせる場合に著作物利用料を払いなさい、ということを想定しているわけです。観客は、チケット代にその費用が含まれていることに、当然納得しているでしょう。そのような条文を根拠に、音楽教室での演奏にも権利が及ぶと解釈するのは、一般の感覚としてはなかなか受け入れられないかもしれません。仮に条文上該当せざるを得ない場合でも、利用料率には十分な配慮をするとか、そもそも権利者に十分なコンセンサスを得るなどのステップを経てから運用を開始するべきだと思います。
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「PPAP」が他人に勝手に商標出願された件について、少し落ち着いて考えてみる

世間はすっかりこの話題でもちきりのようです。問い合わせが多いので、簡単な解説と、弁理士として思うことを少し書いてみます。

コトの発端・・・というとどこが発端なのかわからないのですが、ベストライセンス株式会社とその代表の上田育弘氏が「PPAP」関連の商標出願をしたということが、ネットのみならずテレビ等のメディアで大きく報じられているようです。例えば、


などなど。

ベストライセンスの行為はかねてから業界で問題になっており、このブログでも何度か取り上げたことがありました。


なのでこれまでの経緯は省略しますが、今回は「PPAP」を出願していたことがわかり、炎上しているわけです。

例えば、J-PlatPatでざっくりと「ピイピイエイピイ」という称呼を検索してみると、



関連しそうな出願が4件ヒットして、うち3件がベストライセンスによる出願です(残る1件はエイベックス)。

あるいは、「ペンパイナッポー」で検索してみると、



5件がヒットして、すべてベストライセンスによる出願です。

このあたりから、「ピコ太郎がPPAPを歌うとベストライセンスに使用料を請求される!」という指摘がなされているようですが、その心配はありません。

そもそもまだベストライセンスによって商標出願されただけの段階で、登録されたわけではありません。しかも、どうせ出願料未納なのでしょうから、結局登録されることはないと思います(仮に出願料を払って登録されると、登録料が発生するので、ベストライセンスはそれも納付しないといけません)。

ということでそもそも気にする必要はないと思われるのですが、このあたりを飛ばしてこれらが登録された場合を想定しても、ピコ太郎さんが「PPAP」とか「ペンパイナッポ〜」などと歌っても、ベストライセンスの商標権は侵害しません。


商標権の侵害となるには、現存する商標登録の、

1. 指定商品/役務について、*
2. 登録商標を、**
3. 商標的に使用する、

ことが必要です。

* ** いずれも類似のものを含みます。

しかしながら、歌を歌っても、どの指定商品/役務についても商標を使用することにはならないので、要件1を満たしません。(まぁCMソングなどでは事情が異なる場合もあるかもしれませんが、ここではとりあえずおいておきます。)

このように、ベストライセンスが出願しても、さらには万一それが登録されても、ピコ太郎さんには実質的な影響はありません。他人が勝手に登録するのはけしからん!という感情はわかりますが、「芸人はネタを公表する前に商標出願しておかないといけないのか」というようなことは、心配する必要はありません。


今後もしそれらの出願が問題になるとしたら、

  1. ピコ太郎さんが「PPAP」を商標出願した場合に、登録できないケースが出てくる
  2. ピコ太郎さんが「PPAP」を商標的に使用しようとした場合に、制限されるケースが出てくる
といった点についてでしょう。

1については、実際にエイベックスがベストライセンスに9日間遅れて出願をしており、登録が妨げられる可能性があります。エイベックスにとっては大迷惑でしょう。

また、2については、例えばベストライセンスによる商願2016-108551が「文房具類(第16類)」を指定していることから、ピコ太郎さんが「PPAP」ブランドのペンを販売しようとしたときなどに、問題になるかもしれません。
ベストライセンスの無断大量出願は、今回のように芸能関係で話題になることが多いのですが、商標実務をする上では、たまたま出願内容が重複(類似)してしまうことの方が問題です。

特許庁は、
という通達を出しており、要は「どうせ出願料未納なので、そのうち取り下げられるから待ちましょう」と言うのですが、個人や中小企業では事業のスピードが速く、出願内容が不安定なまま進めることにはリスクがあるとして、商標の変更をせざるを得ないケースがあります。もし出願の譲渡やライセンスなどの交渉をすれば、彼らはその段階で出願料を納付し出願を有効化して、高額の費用を請求してくるであろうことは想像に難くありませんから、こちらから連絡をすることは通常は考えられません。弁理士としては、こういう点が特に問題だと考えています。

特許庁も手を焼いているのだと思いますが、何らかの解決策を見出してほしいものです。
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2016年・年末のご挨拶と、パテント誌記事掲載のご報告

約20年ぶりに紅白歌合戦を見ながらこれを書いています。

2016年も、様々な方にお世話になりました。謹んでお礼申し上げます。

今年は弊所にとって、挑戦の年でした、中国での事業が一段落ついたので、私は日本に滞在する期間を増やして、既存の事業の強化と、新しい事業への進出に力を入れることができました。詳細は公開できない部分もありますが、模倣品対策の分野で実績を積み上げられたことは大きな成果だと考えられています。来年以降も、この分野に力を入れていく予定です。

模倣品対策ということでは、本年9月号のパテントに記事が掲載されました。


ご一読いただけますと幸いです。

来年も、みなさまのお役に立てるよう、精一杯努力する所存です。何卒よろしくお願いいたします。
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パロディTシャツ一斉摘発の件をもう少し考えてみる

先日、アメリカ村でパロディTシャツなどを売っていた店舗の経営者などが一斉に逮捕されたというニュースを紹介しましたが、その後いろいろとご意見を伺ったので、もう少し考えてみたいと思います。

ネット上でも様々な考察がなされていますが、こちらの弁護士ドットコムの記事がよくまとまっているので、参考とさせていただこうと思います。

上記記事でも説明されているとおり、商標の機能は「自他商品識別機能」を基本として、さらに、「出所表示機能」「品質保証機能」「宣伝広告機能」の3つに細分化されると言われています。商標権侵害とは、形式的には指定商品に登録商標を使用すること(いずれも類似のものを含みます)をいいますが、実質的にはそれによって前記いずれかの機能が害されることをいいます。

ただしこの中で、宣伝広告機能については、学説では有力に指摘されているものの、裁判所は一貫してそれを認めていないので、今回は販売者の逮捕にまで至っていることをも考えて、これは考慮しないことにします。

また、ニュース記事からは対象となるパロディ商標がよくわからないので検討がしづらいのですが、そもそもパロディとして成功していない、ただの模倣品と評価されても仕方のないものも含まれているようで、これらは議論から除かないといけません。

今回は、上記弁護士ドットコムの記事で紹介されている、ナイキのロゴと一緒に『NAMAIKI』と書かれているものについて考えてみます。ナイキはロゴ(あのシュッと右上がりの図形)だけでも商標権を持っています(例えば登録2286631号)。そうすると、ロゴ部分のみをみて、形式的に商標権侵害と言ってしまうこともできそうです。

ただこれはかなり乱暴で、例えばそのロゴはそもそも商標的に使用しているのかという議論もできるでしょうし(つまりただのデザインなら商標として使用していない=商標が自他商品識別機能を発揮しない)、また、『NAMAIKI』の文字と一緒に使用しているわけですから、全体として一商標とみたときに、出所の混同は生じない(つまり需要者はナイキのTシャツだとは思わない=出所表示機能を害しない)可能性が高いわけです。

また品質保証機能については、これは通常は商標権者から出た商品の品質が、流通段階で変更されてしまう場合に問題となる機能ですから、パロディ商品とは無関係だと思います。例えば、品質保証機能が問題となるケースで有名なのものに、「並行輸入」があります。これは国内外で商品の品質が変わってしまう可能性があるときは、商標の品質保証機能を害するとして、商標権侵害となるとするものです。もちろん、商品そのものは商標権者から出たことが大前提です。他にも、「ハイミー事件」や「マグアンプ事件」などの有名な事例がありますが、いずれも商標権者から出た商品の流通段階での商標の使用態様が問題とされたものです。

そもそも、出所の混同を生じていない(出所が異なることが明らかな)商品では、何の品質を保証するのか、よくわかりません。『NAMAIKI』のTシャツは当然ナイキのTシャツとは品質が異なりますが、それをもってナイキのTシャツの品質保証機能を害するというのは、無理があるように思います。詳しく調べたわけではありませんが、品質保証機能はまず出所表示機能発揮する商標(商品)の中からさらに問題になるものではないでしょうか。

そう考えると、『NAMAIKI』Tシャツは、ナイキ商標のいずれの機能も害しないように思います。もちろん、『NAMAIKI』Tシャツを見てナイキを想起する人もいるでしょうが、先の記事でも書いたように、それは不正競争防止法の守備範囲です。不正競争防止法2条1項2号では、一定の条件下、狭義の混同(出所の混同)も、広義の混同(関連会社等にあるという混同)すら生じない商標(商品等表示)でも排除できます。『NAMAIKI』を見てナイキを想起してしまうと、ナイキの唯一的地位が弱くなってしまう(希釈化:ダイリューション)ので、これを防止するための規定です。商標法ではここまでは保護していなくて、商標権で排除できるのは、狭義の混同を生じる商標(商品)までです。これは本記事の検討とも整合しています。

と理論的にはこんな感じになって、やっぱり商標権侵害というには少し無理があるように思うんですが、もし立件されたら、裁判所はロゴ部分の商標権侵害をあっさり認めるか、ナイキの著名性を考慮して商標全体も類似するとすらいうかもしれません。実務的にはあまり価値のない議論かもしれませんね。

今回は民事で十分対応できる事例を刑事事件にしたとか、法解釈が曖昧なのに警察が暴走したというようなことが言われていますが、おそらく権利者と警察が協力しながら摘発に結びついたのではないでしょうか。刑事事件の審理で出てきた情報をもとに、今後他店舗も含めて民事訴訟を検討するのかもしれません。刑事であれ民事であれ、訴訟で争われるなら商標法に加えて不競法違反も請求の根拠とされると思います。ただしパロディ商品の商標権侵害性という論点について判断されれば先例的価値があるでしょうから、まずはここを争いたいという思惑があるのかもしれませんね。

個人的な見解では、フランク三浦の件では価格帯や需要者層が異なるという取引の実情を考慮して商標非類似と言ったことを考えると、本件も、商標全体を比較して、非類似に傾いていいように思います。価格帯が異なるので需要者は混同しないと商標登録までしたのですから、商標の使用という場面でも、需要者が狭義の混同をするかどうかを厳格に判断しないと、バランスが悪いのではないでしょうか。

※ もっとも、商標非類似といってしまうと、不正競争防止法で商品等表示が類似するとはかなりいいづらいでしょうから、結局商標類似というしかない気もします。理論上は、狭義の混同を生じないので商標非類似だが、希釈化を生じるので商品等表示類似といってもかまわないのでしょうが、現実には難しいでしょう。このあたりは、狭義の混同という要件を商標の類否に押し込めるしかない商標法と、混同が要求されない不競法の埋めづらいギャップなのかもしれません。
※ また、もしこれを商標権侵害といわないとすると、価格帯が明らかに違う典型的なニセモノ(例えば3,000円のヴィトンのバッグ)は商標権を侵害しないのかということにもなりかねず、やはりもう少し議論が必要なテーマだと思われます。

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パロディーTシャツなどを売っていた人が一斉に逮捕されたようです

ここのところ忙しくブログをサボり気味でしたが、面白いニュースがあったので紹介します。


パロディについてはこのブログでも過去にフランク三浦の事件を紹介していますが、これはパロディ商標の登録というテーマでした。今回はパロディ商品の販売が問題になったということで、少し別の角度から検討できそうです。

具体的に使用されていたパロディ商標はよくわからないのですが、「NIKE」のパロディの「NICE」だとか、「ADIDAS」のパロディの「AJIDESU」などがあった模様です。情報が少ないのでこれらの具体的な商標権侵害性は検討しません(できません)が、ニュースにあるとおり、パロディ商品を商標権侵害で、しかも刑事事件として処理するのは珍しいので、この点を少し考えてみたいです。

過去の記事の繰り返しになりますが、パロディ商品は、典型的なニセモノとは異なり、本物と間違わせて購入させることを目的とはしていません。ブランドを面白おかしく変形させた、一種のギャグ商品なわけです。

これが商標権侵害の適否にどのような影響を与えるかというと、商標はそもそも商標権者の商品と他者の商品を区別するためのものですから、商標権侵害とは、実質的には、商標権者の商品と取り違える態様で商標を使用することをいうことになります。すなわち、商標権の効力は、
第25条
商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。(後段略、ついでに37条1号も省略)
となっていて、形式的には指定商品に登録商標(いずれも類似のものを含む)を使用すれば商標権侵害となりそうですが、実質的にはやはり商品の出所の誤認混同を生じる態様での使用に限定して商標権侵害というべきですから、出所の混同を生じないパロディ商品を商標権侵害ということには、感覚的に受け入れづらい部分もあります。

ニュースにあるような、「ブランドイメージを損なう」というのは、実は商標法の直接の守備範囲ではありません。商標権で防止できるのはあくまでも狭義の混同(商品の取り違え)であって、広義の混同(関連会社にある等の混同)までは防止できませんし、ましてや広義の混同すら生じない商標の使用(例えばパロディ)は、いくら商標同士が類似していても、商標権侵害というべきではないようにも思います。本来ならば、こうした商品には不正競争防止法で対応することになると思われます。
まぁしかし、アメリカ村にはもう十年以上行っていませんが、相変わらずこういう商品がたくさんあるんでしょうね。東京では原宿の竹下通りや上野のアメ横がこんな感じでしょうか。京都だと新京極はどうなんでしょうか。パロディ商品はあまり見ない気がします。ちなみに中国にはいくらでもあります(笑)

今回はおそらく権利者の代理人(弁護士)が頑張って、マスコミを巻き込んで大規模な摘発に結びついたのだと思います。これらの商品はネット上でも山ほど売られているにも関わらず、実店舗を狙ったのは、見せしめというか話題性の大きさを考慮したのかもしれません。このニュースを受けて、他店舗やネット上のパロディ商品の流通にどのような影響が出るのか、興味がありますね。もちろん本件が起訴されたらその判決にも大いに興味があります。
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『パテント』に記事掲載されました

日本弁理士会が発行する月刊誌、『パテント』の今月号(9月号)の特集が「模倣品対策」でして、私も義烏絡みの記事をひとつ寄稿しました(偉そうに言っていますが、パテントを作る委員会に知り合いの弁理士がいて、中国絡みで書くよう頼まれただけです)。

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そもそも弁理士以外の方は『パテント』をご存知でないと思いますが、ざっくりいうと弁理士会の会報誌のような位置付けの雑誌です(こんな表現をすると怒られるかも)。弁理士には毎月全員に強制的に送られてきますが、それ以外は、官公庁や裁判所、警察、税関などの知財関連の機関の方を除いては、あまり目にする機会がないかもしれません。基本的には弁理士が論文のようなものを投稿して、審査に通ると掲載されるようになっています。

私の記事は論文ではなく(まぁ形式的には論文なのかもしれませんが)、単に義烏と福田市場、さらに、義烏を介して行われる中国輸入というモデルについて、模倣品の観点から紹介するというものです。
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記事内容は、卸売に特化した義烏という街をざっくりと紹介し、そのトレードマークでもある福田市場について説明をした上で、福田市場やタオバオ、アリババなどから小口で模倣品を輸入し日本のネットで販売する「中国輸入」にも軽く触れ、それに対する効率的な対応策を提案するものです。

紙面の制限があり表面的な話しかできませんでしたが、おそらく法律専門家の観点から義烏を紹介する記事は史上初ではないかと思われ、また特に、「中国輸入」というわけのわからない偽物販売ビジネスについて広く世に紹介することができたことは有意義であったと考えています。

これまで規模が小さすぎて対応コストがペイしないため、中国輸入という偽物販売ビジネスは無視されてきたという現実がありましたが、比較的コストをかけずに効果的な対応ができるのであれば、権利者さんたちも動けるかもしれません。

そしてそうした小規模の偽物を大量に発信しているのが義烏だという事実を知っていただければ、より効果的な対応ができるようになる可能性があります。

本当は福田市場にある偽物商品の写真を大量に掲載して、偽物を売っているブースに突撃取材して・・・などをやりたかったのですが、『パテント』に載せる以上そういうわけにはいかず、一般論を紹介するに留めました。

また中国輸入についても、基本的には日本のアマゾンで売られるとか、最近はメルカリがやばいとか書きたかったのですが、具体的な名称を出すわけにはいかず、こちらも一般論として説明するだけになっています。

これらについてより具体的な内容をお知りになりたい方は、無料でセミナーをやっていますので、お気軽にお申し付けください。

なお、この記事は2ヶ月後にPDFで公開されますので、『パテント』を入手できない方は、そちらにお目通しいただければ幸いです。

※ ところでタイトルの 「ニセモノのふるさと」義烏と「中国輸入」 という表現は、カギ括弧の位置がイマイチよくわからないものになっていますが、まぁいろいろあったのです。本当はカギ括弧のないタイトルで提出したのですが、いろいろ問題がありそうということで、いろいろ検討した上でこの形に落ち着きました。お察しください。
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義烏にきています160904

昨日から中国・義烏にきています。

義烏の福田市場は世界最大の卸売市場で、弁理士の目で見ると、とにかくニセモノだらけでどうしようもないところです。

今日午後に時間ができたので、小一時間市場を覗いてきました。市場で見つけた商品を紹介します。

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ポケモン、ゲットだぜ!中国人は本当に仕事が速いです。これ、市場で大流行中。あちこちの店舗で置いてました。ちなみにモバイルバッテリです。

さきほど夜市でこれを見かけたので値段をきいたら、10,000mAhのもので、150元(約2500円)だそうです。買わないので値切らなかったんですが(※たいていふっかけられるので、値切って適正価格まで落とす手間が必要です)、おそらく本来は100元(約1700円)程度で売っているのではないでしょうか。

まさかと思い探してみたら・・・日本でもネットで売られていました。



日本人も負けじと仕事が速いですね。

※ この商品が任天堂さんあるいは他社さんの何らかの権利を侵害するとか、違法性を有しているかなどは、わかりません(調べてもいません)。
ほかにも・・・
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どこかで見たことがあるキャラクターばかりですが、すべてモバイルバッテリです。ライセンス商品である確率は限りなくゼロに近いと考えてOKです。

まだまだ、

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iRingと書いてありますが、おそらくニセモノでしょう。それにしてもポケモンは大人気ですね。

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相変わらずスマホケースはニセモノの宝庫です。

ほかには例えば、

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ゲーム機には詳しくないのですが、おそらく勝手に商標を使用しているニセモノです(商標権の存在については未確認ですが、仮に存在しなくても、日本に輸入されたら不正競争防止法で処理できると思われます)。

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このように、 "FOR PS II (PS2用)" という書き方なら、商標的な使用からは外れてくる可能性が出てくると思われますが。

次はかばんコーナー。

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いつの時代もディズニーは大人気。

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普遍の高級ブランド。ニセモノとの戦いは永遠に終わらない。
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これらは市場内の看板。そうです、福田市場には正規代理店も入っているんです。

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これらはすべて正規代理店による、正規商品です。

ただし、彼らの代理権の範囲は、ほぼ確実に、中国内での流通のみです。すなわち彼らは、ディズニー商品を、中国内で流通させる業者にしか売ることができません。もし中国外で販売する業者に卸すと、ライセンス違反となります。

実はここに問題があります。これら正規代理店から商品を仕入れ、日本に輸入する輩が後を絶たないのです。中国人を遣わせて中国内で販売すると嘘をついて商品を仕入れ、日本への輸入時には並行輸入をうたうわけです。こうした輸入への対応は、技術的・法的・金銭的に難しいという問題があります。福田市場の正規代理店は日本人に騙された立場にありますが、ライセンス違反の責任を負う場合があり、一部の日本人の行為が中国人に迷惑をかけています。
ほんの小一時間市場を歩いただけで、これだけのニセモノが見つかりました。いや、本当はもっともっとあったのですが、撮影できたのは店先に並んでいたものだけです。最近はこうしたわかりやすいニセモノは店先には置かず、奥の方だが目立つ位置に陳列するケースが増えているようです。見えづらい場所にあるものも含めたら、市場全体でどれだけのニセモノがあるのか、もはや見当もつきません。

しかしながら最近は、こうしたわかりやすいニセモノはあまり日本に入ってこず、他の外国(東南アジアや中等など)に輸出されることが多いようです。権利者は対応コストに苦慮していることでしょう。

一方で日本人は、ブランド商品など人気の高いものをサンプルとして福田市場に持ち込み、それのコピーを作らせます。わざわざニセモノを作りに中国まで来るのですから、呆れてしまいます。特に最近は、そうして作ったコピー商品の商標を自社のブランドに変更して、「オリジナル商品」を名乗って販売する事例が増えています。日本における模倣品は、ブランド模倣からデザイン模倣にシフトしています。設計図も仕様書も書かず(描かず)に「オリジナル商品」をうたう図々しさには呆れるばかりですが、そもそもそうした商品はニセモノ、模倣品でしかないという根本的な部分を理解してほしいものです。
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弁理士制度について思うことと、ベストライセンスの件への若干のコメント 〜弁理士の日によせて〜

さて、今日7月1日は「弁理士の日」です。正直なぜ弁理士の日なのか知らないのですが、おそらく弁理士制度が開始された日とかそういうことだと思います。もう百年以上昔の話です。毎年弁理士会主催のパーティーがあるのですが、今年も開催されるのでしょうか。1万円くらいかかるので行ったことはないですが。。

ということで、知財系ブロガーによる弁理士の日を盛り上げるイベントに参加させていただくことになり、「知財業界でホットなもの」について記事を書かなければなりません。ここ数日何かネタはないかと考え続けていたのですが、思いつきません。仕方ないので、弁理士制度(弁理士試験)について書いてみます。

といっても弁理士試験には合格以来まったく関わっておらず、どうやら最近は科目合格制?のようなものも導入されたとかで、既に私の知っている制度ではないようです。

最近知った情報だと、十数年前には受験者数が1万人程度いたものが、最近は5千人前後に減っているとかなんとか。産構審(?)あたりでなんやら議論されているのをチラッと見ましたが、弁理士資格に魅力がなくなっているのが原因だからもっと受験生を増やす工夫をしようという話がありました。ただ私が思うに、十数年前に一気に受験者数&合格者を増やしたのが異常事態というか、要はバブルだったわけで、それ以前の受験者数は5千人以下だったはずです。4000-5000人受けて100-200人受かるとかそういう資格だったものを、当時の小泉総理がアメリカの真似をして(60年も遅れて)「知財立国」などと言い出し、その一環でなぜか弁理士を急増させることになって、一気に合格基準を下げて大量に合格させ始めたという事情があったように記憶しています。当時は弁理士試験は超難関資格で、何十年も頑張ってそれでも受からない方もいましたが、合格者増によってそういう方々が軒並み弁理士になったいま、受験者数が減るのは当然だし、そもそも500-700人の合格者という高い数字を維持する必要もないのではないかと考えています(たいてい自分が受かった後はこういうものです)。

私が学生時代に弁理士を目指し始めた頃は、日本の弁理士は約3500人しかおらず、国民一人あたりの弁理士数は先進国の中でかなり下位にある、という説明がなされていました。現在は弁理士数は1万人を超えているはずで、当時の3倍程度に増えています。一方で特許出願数は当時の3/4程度に減少しており、単純計算で、弁理士一人あたりが扱う特許出願数は 3/4 × 1/3 = 1/4 にまで減っています。30万件の特許出願数を弁理士1万人で割れば、弁理士一人が受任する特許出願は、平均で30件/年です。1件あたりの売上げが50万円だとすると、年商(売上げ)ベースで1500万円。意匠商標を入れて2000万円くらいでしょうか。いくら特許事務所の利益率が高いといっても、厳しい数字に思います。

それまで弁理士はある種の特権階級というか、合格しさえすれば高収入が保証された資格でした。具体的な数字を挙げると怒られそうですが、合格すれば年収1千万スタート、独立すれば3千万スタート、などという話も聞きました。弁理士数に対して出願数が多かったので、「先生、お願いします」という時代だったのだとか。

もちろんこんな話は今や昔、現在は弁理士になっても就職先を見つけるのが大変なくらいです。特に新人弁理士は大変で、大手事務所に就職できないと自宅などでいきなり開業するしかなく、個人や中小企業の商標出願で食いつなぐしかありません。これまでは大手事務所に就職→案件を引っ張って独立という黄金コースで開業したものですが、当然この競争も激しくなっており、優秀な弁理士もなかなか独立できないようです。弁理士のクライアントはほとんどが大企業なことを考えると、これから合格していきなり独立してもそれら大企業とお付き合いできる可能性は高くなく、結局個人や中小企業の案件専門の事務所を開業するしかない可能性が高いわけですが、そういう仕事のみをしていても弁理士としての成長には限界があるので、将来のことを考えると不安です。試験制度がどうであれ合格できる(かつての100人合格時代でも合格できた優秀な人)ならばこうした流れの影響を受けないのかもしれませんが、バブルのおかげで合格できた人(私もそうかもしれません・笑)には厳しい時代です。

こうして個人や中小企業の仕事すら弁理士が奪い合い、価格競争に突入した時代を俯瞰してみると、小泉総理の目論見は見事に的中したといえるのでしょう。いまだ圧倒的に一人事務所(弁理士1人の特許事務所)が多いと思いますが、こういう競争の時代を生き抜くには、オールインワンの大手になるか、際立った部分を持った小規模事務所を目指すか、どちらかになると思います。中途半端な規模の事務所の存在意義はどんどん薄れていくからです(大手に頼んだ方が安心ですからね)。そういう意味で、特許業務法人制度を活用してどんどん巨大化していく事務所が出てくるのは当然の流れでしょうし、一方で小規模事務所路線でいくならば、そもそも特許事務所が所長個人に依存した商売であることを考えると、「この分野においてはこの弁理士に頼みたい」というような部分を見つけてそこを極めるしかないと思います。

大手事務所ならば安定して大企業の案件が入ってくるでしょうし、弁理士としてのスキルの向上も期待できるので、人生設計という点ではかなりの優位性があります。一方で小規模事務所ならば、自分に合わせて事務所の特色を打ち出していけるでしょうし、そこで大手事務所にはない色を出していける部分もたくさんあるはずで、経営者・専門家いずれの面白さも存分に味わえると思います。どちらも一長一短でしょうが、会社勤めをして出世できるタイプの人は大手事務所が向いているかもしれませんし、好きなことにのめり込むタイプの人は一匹狼でやっていくほうが成功しやすいのかもしれません。まぁ弁理士制度もいろいろ変わって、出願案件が少ないなら次はコンサルだなんだと盛り上がっているところですから、大手事務所で出願案件をこなすだけでなく、ある分野で特色を打ち出した変わり者の弁理士がたくさん出てくると知財業界ももっと盛り上がるのかなという気がしています。そもそも知財というニッチな分野に全人生をかけようということが無茶な気もしますが・・・。

※ 本当は「副業としての弁理士」というテーマで書こうと思っていましたが、さすがに怒られそうなので無難な内容にまとめてしまいました。まぁこれからの弁理士には様々な可能性があるというのは正しいと思います。

さてすっかり話題は変わって、例のベストライセンスの件です。なんと朝日新聞が上田育弘氏からかなり詳細なコメントを取ってきました。


彼が何を考えているのか、少しずつわかってきたような気がします。要は、将来的に利用できる可能性が少しでもある商標は、とりあえず出願するのだと。その中で、活用の可能性が出てきたものについては料金納付をして登録を目指すと。活用方法は、主に第三者へのライセンスや譲渡を考えていると。実際にBITOの件ではライセンス供与の提案をしたと。

このような商売を、「商標ゴロ」といいます。使用予定のない商標権を多数保有して、必要としている人に高額で売りつけたり、損害賠償を請求するわけです。特許の世界では「パテント・トロール」などと呼ばれ、問題になっています。ただし特許の場合は発明者か承継人しか出願できない(出願しても登録できない)ため、正当なルートで出願・登録された権利を安く買い取って、第三者に権利行使をすることになります。GoogleやMSも被害に遭っているようです。一方で商標は、上田氏のいうとおり、基本的に早い者勝ちなので、先に出願した人が権利を得られます。そのため今後価値の上がりそうな商標を片っ端から登録して、欲しい人がいればライセンスや譲渡の交渉をすることを考えているのでしょう。

このような行為は、現行の商標法上ある程度はしかたありません。有名ブランドがたまたま商標登録されていない場合に、先回り出願(登録)して権利を高く売りつけようとするケースは想定されており、法的に対応できるのですが、今後価値が出るかどうかわからない商標については、基本的には誰でも早い者勝ちで登録できることになっています。つまり先回り出願自体や大量出願自体を責めるのは、(倫理的にはともかく、)現行法上少し無理があると言わざるを得ません。これは先の記事でも指摘したとおりです*。

ベストライセンスの件は、同じ商標ゴロでも、出願料を納付せずに行っている点に問題があります。商標法ではこのようなやり方を想定しておらず、特許庁の事務処理に少なからぬ負担をかけているであろうことや、他の出願人の商標選択に影響を与えていることを考えると、「制度の抜け穴」で済ませていいのかには強い疑問があります。

もっとも、そもそも出願料を納付しないからこそこのような大量の出願が行えているわけですから、出願料を納付しないことと大量出願をすること、さらにはその内容が先回り出願であることも含めて、すべて一体の行為として非難されるべきといえるようにも思えます。

一般論として、知的財産権をもっと流通させるべきという意見には同意できます。特に特許などは眠らせておかずに実際に活用してこそ世の中の役に立ちますし、登録商標においてはその80%程度が不使用であるとのデータもあります。ライセンスや権利売買により有効に活用できるようになるのであればそれは好ましいですし、実際に今後そのようなプラットフォームは続々と登場すると思います。しかし彼らのやり方は自分だけが儲かればいいというもので、そのために他人に迷惑をかけても構わないというスタンスのものですから、いくら大義名分を掲げても評価されることはないように思います。ベストライセンスの件をきっかけに、知財業界でより積極的に権利流通のルール作りなどの議論をすべきなのかもしれません。
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