日本人による模倣品製造・輸入について考える

私はいま中国の義烏(イーウー)という街に駐在しています。

義烏には世界最大の卸売市場(通称福田市場)があり、最近はネットで簡単に販売できるので、日本人も多く買い付けに訪れます。

そのような日本人の多くが、既に日本で売れている商品をサンプルとして持ち込んで、福田市場の卸問屋や工場に、同じ商品を作らせています。

その上で、オリジナル商品の本体やパッケージに入っている商標(ロゴなど)を取り除き、代わりに自社ブランドの商標を付したものを製造しています。

そうすれば商標権を侵害することがないので、輸入販売しても問題ないと考えているようです。



「このような手法に問題はないですよね?」という問い合わせが毎日のようにあります(特に義烏にいらした方はみなさんお尋ねになります)が、問題ないわけがありません。

そもそも他人がデザイン・開発した商品のコピー商品を製造しているのですから、知的財産権を侵害する可能性がかなり高いです。怪しいセミナーやコンサルタントがこのような手法を教えているようですが、そんなものに騙されず、常識で危険だと感じる感性は、日本人の大人として当然持っていただきたいものです。所詮偽物・模倣品を作っているだけですから、それが家族や友人に対して誇れる仕事なのか、一度じっくりと考えていただきたいと思います。



特許庁が毎年発表している「模倣被害調査報告書(2014年版)」によれば、最も多い模倣被害は「デッドコピー」で、以降「デザイン模倣」、「ブランド偽装」と続きます。

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デッドコピーとはそっくり同じ形のコピーを作るという意味で、デザイン模倣とは既に売れている商品のデザインを少しだけ変えて作る場合です。ブランド偽装とは、他人の商品から商標を取り除き自社の商標を付す場合を含みます。まさに義烏で多くの日本人が行っている行為です。


また、そうした模倣の手口はどんどん巧妙化していると言われています。同報告書によると、売れている商品のデッドコピーを作り、ノーブランド品として販売する手法や、中国の工場に画像を送りOEM生産させる手法が、巧妙化する模倣手段の上位にランクインしています。

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アリババなどのサイトを使い誰でもネットだけで簡単に中国の工場にOEM生産を発注することはできるようになったことが原因ですが、工場にサンプルを持ち込んでそれの偽物を作らせる原始的な手法もまだまだ現役です。

そうした偽物は、当然正規商品よりも安く売られます。

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そして、それらの偽物の多くは、インターネット上で販売されています。

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こうして見てみると、個人レベルの事業者が中国で偽物を買い付けたり中国の工場に作らせたりする行為は、もはや見過ごせない規模にまで拡大していると考えられます。各輸入者の取引数量は少なくても、中国輸入全体ではかなりの規模となっているものと思われます。


中国輸入は、日本経済にとって百害あって一利なしです。そもそも輸入自体が日本経済に寄与しないと言われています。日本円を外貨として外国にばら撒いた上に、製造等において日本での雇用を生み出さないからです。そのため輸入商品には関税が課されますし、輸入業には公的な補助金が出ることはほとんどありません(少なくとも仕入代金への補助金はまずないと思います)。

さらに中国輸入は、日本企業が開発した商品の模倣品を日本で輸入・販売するので、もろに日本企業の市場と競合し、シェアを奪います。日本企業の正規商品の価格には開発や広告にかけた費用が含まれていますが、中国輸入の模倣品はそのコストを回収する必要がないので、上述のように正規商品よりも安く販売できます。こうして正規商品のシェアが奪われてしまうと、日本企業は開発にかけた費用を回収できず、体力を奪われていき、ひいては日本経済自体の衰退に繋がっていきます。中国輸入はそもそも日本企業が創りだしたシェアを横取りしているに過ぎないので、いくら売り上げても日本経済には一切寄与しません。本来日本企業が得るべき利益を窃取しているだけなので、到底まともな商売とはいえないないですし、日本企業がそのような者への対応にコストを掛けなければならないことを考えると、もはや国家として対応すべき問題だといえるでしょう。

まともな日本企業の方々には、「中国輸入」の業態がどのようなものかピンとこないかもしれません。しかし、本記事で指摘したような模倣品の製造・輸入・販売はかなりの規模で行われています。それもサラリーマンや主婦が副業として気軽に行うケースも決して少なくありません。売れている日本商品の情報を中国工場に提供してその模倣品を作らせるとか、中国企業が既に商品化した模倣品に自社ロゴをプリントしてOEMと称して比較的小ロットで製造することは、とても簡単です。そのような模倣商品をクーリエ(小口空輸便)やコンテナ混載便でパラパラと輸入し、アマゾンなどのインターネットショッピングサイトで販売する手法はもはやひとつの個人向けビジネスとして確立しています。こうした個人レベルの模倣品販売への効率的な対応が、現代の日本企業が直面する課題だといえます。

※引用したグラフの出典は、いずれも『2014年度 模倣被害調査報告書』(特許庁)です。


本記事にいう「中国輸入」とは、日本で売れ行きの良い商品の模倣品を中国で仕入れるか製造して輸入する業態をいうもので、中国からの輸入を広く含む概念ではありません。多くの日本企業が商品の製造を中国で行っていますが、自社で開発した商品を、必要な調査を行った上で、製造部分のみ中国で行うような業態はここにいう「中国輸入」には含まれないことにご留意ください。
中国輸入業者は「他社製品の模倣は大企業でもやっている」などと言い自己の行為を正当化しようとしますが、他社製品を参考にしつつ独自の商品を開発し、他人の知的財産権を侵害しないか調査を行った上で中国で製造する業態と同列に語ることは到底できません。

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