OEM・ODMと知的財産

最近は中国の工場に小ロットで製造を依頼できるようになったため、個人レベルの方でも工場と直接取引きをしてオリジナル商品を製造する例がかなり増えました。

それは良いことなのですが、そのような商品を製造し、日本に輸入して、いざ販売するという段階で「この商品を販売しても法的な問題がないか教えてください(しかも無料で)」という問い合わせが結構あります。このようなお問い合せをfacebookなどの個人メッセージでいただいても対応できないので閉口しているのですが、それ以前に商売の進め方として問題があります。

多くの方は「これはOEM生産なので大丈夫だと思いますが、念の為専門家の意見を聴かせてください」などと仰るのですが、OEMであることと他人の知的財産権侵害をするかどうかは、基本的には関係ありません。

まずは用語の定義を明らかにすべきですが、OEM(Original Equipment Manufacturing)とは、自社で開発した商品を製造するときに、製造能力がないとか足りないなどの事情により、製造部分だけを他社に委託する製造方法をいいます。

他社工場で製造するものの、商品開発自体は独自に行うため、製造するのは当然オリジナル商品となりますし、商品には自社のブランド(ロゴなど)を入れることになります。製造にあたっては設計図や技術情報を製造業者に提供しますし、技術指導をしたり人員を供与することもあります。

また、ODM(Original Design Manufacturing)という製造方法もあります。これは製造を受託する工場側が商品のデザインまでを開発するケースで、そのデザインに自社のブランド(ロゴなど)を入れた商品を工場に製造させます。

私に問い合わせのあるケースの多くは、アリババで工場を探してそこに製造委託し、商品に自社の商標を印刷等しています。アリババでは通常、工場側が製造できる商品を写真付きで公開しているので、発注者は数量を指定してその商品の製造を委託します。その商品に自社のロゴなどを入れるか、せいぜい多少のデザイン変更をする程度の改変をするのみで、基本的には工場側が提示した商品をそのまま製造します。このような製造方法がOEMなのかODMなのかは難しいところですが、発注者側が商品開発にほとんど寄与していないことを考えると、ODMに分類するのがよいと思われます。

さて、こうして中国の工場を利用して自社ブランドの商品を簡単にODMできる時代になったわけですが、そのような方法で製造した商品も、単に中国商品を転売する場合と比べて、知的財産権侵害をするリスクはほとんど変わりません。これは上記の説明でおわかりいただけると思うのですが、独自に発注し製造させているとはいえ、その骨格は中国の工場が開発した商品にほとんど手を加えずそれを製造、輸入し、日本で販売するからです。中国で仕入れられる商品のほとんどが偽物であるという話を以前しましたが、アリババに出ている商品も中国工場がどこかの商品を模倣したものですから、それを自社のブランドの商品として製造させる方法も、同様にほとんどが偽物を製造していることになります。

このような偽物の製造方法が蔓延している原因には、「オリジナルを少し改変すれば偽物ではなくなる」という誤った認識があるものと思われます。知的財産の世界では、他人の権利内容を少し改変すれば権利侵害とはならない、とはなっていません。例えば意匠権や商標権は、登録された意匠や商標と類似する意匠や商標まで権利が及ぶので、多少の改変をしても権利範囲に入ったままのケースが多くあります。また、権利範囲から外れるよう大きな改変をした場合は、別の権利の権利範囲に入ってしまう可能性があります。法的な構成はともかく、特許権や実用新案権、著作権、あるいは不正競争防止法でも事情はほぼ同じです。結局、少し改変したしたかどうかではなく、自分が製造・輸入・販売する商品が他人の知的財産権を侵害するかどうかを確認することが重要なのです。

実際に、従来のOEMまたはODMでは、製造に入る前にこのような調査をすることが常識です。例えばアップルはほぼ100パーセントの商品をOEMしていることで有名ですが、開発段階で世界中の知的財産権の調査をしているはずです。また、多くの日本企業も中国の工場と提携してOEM生産をしていますが、やはり開発段階、少なくとも製造前にはこうした調査をすることが常識です。弊社にご依頼いただく調査も、当然ほぼすべてがこのような段階で行うものです。そのような前提のもとに日本で流通する中国商品の品質や合法性が保たれているのであって、単にアリババで発見した商品をOEM/ODMした商品について同列に語ろうとすることはできません。

その意味で、販売前に違法性の調査を依頼してくる人は一見正しいのですが、いかんせん「オリジナルを少し改変すれば偽物ではなくなる」という考えのもとに既に商品を製造し、日本に輸入までしてしまっているので、もはや権利侵害を議論すべき段階をかなり過ぎてしまっていることになります。本来ならば製造に入る前、商品の開発段階でそのような検討すべきでしたが、自社で開発をしていないので検討することができなかったのでしょう。そもそも販売直前の段階で調査を依頼し、販売NGの調査結果が出た場合はどうするつもりなのでしょうか。「多少改変しているのだから法律上問題ない」という前提がそもそも誤っているので、せめて発注する前にご相談いただきたいものです(それでも無料でアドバイスできる範囲は限られてしまいますが)。

なお、アリババなどのネットを用いず、中国の工場に直接サンプル(他社商品)を持ち込み、それの類似商品を製造するよう交渉するやり方は昔からありますが、これが単に偽物を製造しているということはいうまでもありません。特に最近はそうして製造した偽物を日本のネットで誰でも簡単に販売できるため、日本人による偽物のOEM/ODM生産はますます増加しています。ネット上で自社商品の偽物が販売されていることを発見したら、すぐに専門家に相談されることをお勧めいたします。

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