新サンダーバードで国際救助隊がインターナショナルレスキューとなった件から考える「商標的使用」

NHKでサンダーバードの新編が始まったようです。サンダーバードといえば国際救助隊ですが、新編ではこれがインターナショナルレスキューという名称に変わっており、その理由が商標登録があるためだとネットで話題になっています。

まず、そもそも国際救助隊は、オリジナル(英語版)では、インターナショナルレスキュー(International Rescue)です。国際救助隊のロゴにも IR の文字があり、これは International Rescue の頭文字をとったものと思われます。


ただこれまでは国際救助隊と日本語訳されていた(日本のファンにはこの名称で定着している)にもかかわらず、新編ではなぜかそのまま横文字が使用されています。商標登録が存在するせいで「国際救助隊」という名称が使えないのだと言われているようですが、実際はどうなのでしょう。
調べてみると、たしかに「国際救助隊」についての商標登録があります。

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株式会社アントレプレナーという会社が、平成22年に商標登録しています。商標は、「国際救助隊/Kokusai Kyujo Tai」という二段書き、指定役務はすべて第45類で、「インターネットの電子掲示板を用いたプロフィール・日記等の個人に関する情報の提供,インターネット上でのウェブサイトを通じた一般利用者向けの友達探し及び紹介のための情報の提供,ファッション情報の提供,施設の警備,身辺の警備,個人の身元又は行動に関する調査,占い,身の上相談,衣服の貸与,装身具の貸与」となっています。

サンダーバードの救助隊の名称に国際救助隊を用いるとこの商標権を侵害するといえるには、(商標の類似性はまあ議論しなくていいでしょう、)少なくとも役務が同一・類似でないといけません。正直何をするのかよくわからない役務も指定されていますが、ざっと見て問題になるものはなさそうです。つまりそもそも商標権侵害はしないと考えていいでしょう。
これだけで本記事は終わってしまうんですが、せっかくなのでもう少し広げて考えてみます。仮にNHKが、サンダーバードを放映することが上記の指定役務のどれかと同一・類似の役務に当たると考えていたとしたらどうでしょう。話をわかりやすくするために、もし上記指定役務に、「テレビ番組の制作又は配給」または「救助活動」が含まれると仮定した場合、作品中で「国際救助隊、出動!」というセリフがあった場合、商標権侵害となるのでしょうか?

商標権侵害といえるには、その商標を「商標的に」使用しないといけません。「商標的に使用する」とは、その商標を「出所を表示する態様で使用する」という意味です。つまり、その商標を使用することで、他人の商品や役務と取り違えられてしまうおそれがある場合に、商標権侵害となります

そう考えると、いくら作品中で「国際救助隊」を用いても、それによってこの作品を作った人がテレビ番組の制作又は配給をしていることも、救助活動をしていることも表さないでしょうから、やはり商標権侵害とはなりません。つまり、商標権侵害は考慮する必要はなさそうです。

ではなぜ新サンダーバードでは国際救助隊がインターナショナルレスキューになってしまったのでしょうか。もしかしたら、商標以外の視点(例えば全世界で名称を共通にするなど)があったのかもしれません。あるいは、上記のとおり放映では商標権は問題にならないにせよ、今後の関連商品の販売やイベントの開催などの活動において、どこかで商標権が問題になるケースが考えられ、そのリスクを避けるために名称を変更したとも考えられます。
実は似たような相談を受けることは珍しくありません。例えば、会社を作り活動し始めたが、ある程度経ったところで他人の商標権が存在することに気付いた。社名変更や損害賠償を求められたりしないか?という相談が多いです。これも上記と同じで、会社名が他人の登録商標と同じなだけでは、(指定商品・役務が事業内容と重複していても、)商標権侵害をすることはあまりありません。会社名を会社名として使用するだけでは、商標的に使用することにはならないことが多いからです。

ただ、企業の様々な活動の中で、その一部で商標的に使用するケースが絶対にないかというと、それは難しいかもしれません。常に商標権侵害を心配しながら事業活動をするのは大変です。実際に相談があったケースは、「領収書に会社名を印字してもいいのか」「商品を入れるビニール袋への印刷はどうか」「ネットショップの店名に会社名を含んでいたらダメなのか」など、企業が普通に活動する範囲内のものです。会社名を使うたびに商標権侵害を危惧しなければならず、大きな負担となっています。

こういうことにならないように、少なくとも会社名を決めるときには商標のチェックをするべきです。私は常々、

  • 商標登録
  • ドメイン
  • facebookのページ名
  • twitterアカウント

を調べて、先行するものがない会社名にするようアドバイスしています。まぁfacebookやtwitterなどはなんとかなるかもしれませんが、いずれにせよこうした事情を考慮しておくに越したことはありません。また設立時に先行登録がなかったとしても、その後他人が商標登録をしたらその後はその商標権に怯えなければならない事情は変わらないので、やはり自ら会社名を商標登録しておくというのはそれなりに価値のあることです。会社設立時にはいろいろと物入りなので、その中で商標登録を特に優先すべきだとは思いませんが、事業が軌道に乗って大きな契約が取れたり従業員を雇うような段階に差し掛かったら、一度検討してみるとよいでしょう。商標登録にかかるコストは十万円前後ですから、企業の経費としてはそれほど負担ではないはずです。そういう時期になったときが登録のタイミングなのかもしれません(※早い方がいいことは間違いありません!)。
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