「◯◯風」と知的財産権侵害

小売店の方からよくいただく質問のひとつに、他人の商標などを用いて「◯◯風」や「◯◯タイプ」として売ってよいかというものがあります。

これにはいろいろな角度から回答することができるのですが、今回は商品自体が他人の知的財産権を侵害する場合とそうでない場合に分けて考えてみます。

商品が他人の知的財産権を侵害する場合

そもそも商品自体が他人の知的財産権を侵害する場合は、商品名や商品説明をいくら「◯◯風」などとしても、もちろん侵害の事実はなくなりません。

コピー商品を売る場合

わかりやすい例では、もののけ姫のコピーDVDを「もののけ姫風アニメ」のDVDとして販売しても、当然著作権侵害ですよね。

同様に、ヴィトンの財布の偽物を「ヴィトン風の財布」として販売しても、もちろん商標権侵害などの違法行為です。

このあたりは常識で理解できると思います。

コスプレ衣装

特に質問が多いのが、アニメキャラクターなどのコスプレ衣装です。例えば綾波レイのプラグスーツのコスプレ衣装を「綾波レイ風」として売ってよいのでしょうか?

出典:blog-imgs-27.fc2.com

無許諾のコスプレ衣装の販売等が著作権を侵害するかどうかは、微妙です。そもそもマンガやアニメに出てくる衣装に著作物性があるかどうか自体に十分な議論がされていないように見受けられますし、仮にあるにしても、作品や衣装ごとに判断されるべきことは明らかです。つまり、あるアニメの衣装に著作物性があるかどうかはケースバイケースですし、その判断は(基準がない現在では)専門家でも容易にはできないのです。

ただし、そうしたコスプレ衣装の輸入販売が著作権侵害であるとして検挙された事例もありますし、場合によっては他人の著作権を侵害する可能性があることは認識しないといけません。

本題に戻りますが、仮に綾波レイの衣装(プラグスーツ)に著作物性がある場合、それを輸入販売することは著作権(複製権等)の侵害になるので、いくら販売時に「綾波レイ風」としても違法です。逆に著作物性がない場合は、「綾波レイ風」としたところで、更には「綾波レイのプラグスーツ」としたとしても、著作権侵害とはなりません。

結局、輸入や販売をする前に対象となる衣装の著作物性を確認する必要がありますが、上述のようにその判断は専門家にすら難しいことが多いです。そうすると、無許諾のコスプレ衣装の輸入販売は、著作権侵害をするかどうかわからないものを販売してしまう可能性が非常に高く、「◯◯風」とするかどうかに関わらず、リスクが大きいといわざるを得ません。

結論

結局、商品そのものが違法なら、「◯◯風」とするか否かに関わらず、常に違法ということになります。「◯◯風」としておけば偽物を売っていることにはならないので問題ないと考えている人が多いですが、これは根本的に間違っています。上記は主に著作権の観点から説明しましたが、特許権や意匠権など、他の知的財産権でも事情は同じです。

商品が他人の知的財産権を侵害しない場合

一方で、商品そのものは他人の知的財産権を侵害することはないが、それを「◯◯風」として売ることで問題になることがあります。

登録商標を利用する場合

例えばある香水を販売するときに、「シャネルNo.5風」の香水として販売することは許されるのでしょうか。

これには、パッケージに「シャネルNo.5と香りのタイプが同じです」と記載された安価な香水がシャネルの商標権を侵害するとされた事例があります。

ただしこの事件では多少特殊な事情があったので、必ずしも他人の登録商標を「◯◯風」「◯◯タイプ」などとして使うと商標権侵害となるわけではありません。本事件の解説は省略しますが、通常は商標的な使用とは認められないと思われるケースでも、商標の知名度や使用方法によっては商標権侵害となってしまう場合があることが示された点で、注目する価値があります。本事件の射程距離(先例的価値)がどれくらいあるかはわかりませんが、一般には、有名な商標は「◯◯風」などという形でも勝手に使わない方が安全ということが読み取れそうです。

著名な未登録商標を利用する場合

例えばボッテガヴェネタが座布団について商標権を持っていない場合に、編みこみタイプの座布団を「ボッテガ風座布団」として販売できるのでしょうか。

商標登録も防護標章登録も存在しない場合、商標法は問題になりません(もちろん類似範囲も考慮した結果です)。しかし、その名称が有名な場合は、不正競争防止法が問題になる場合があります。

「ボッテガ風座布団」は商品名にも商品説明にも用いることができると思われます。商品名の場合は不正競争防止法上の商品表示に該当することは明らかだと思いますが、商品説明の場合は、一般には商品表示には該当しづらいとも考えられます。しかしこの場合でも、上記シャネルNo.5タイプ事件にあるように、一定の条件を満たせば商品表示に当たると判断される可能性は十分にあります。特に商品表示が商標よりも広い(定義上だけでなく実務上も)概念であることを考えると、商標にすらなり得るのですから、当然商品表示にもなると考えるべきでしょう。

そうすると、『ボッテガ』が著名(or周知)であるという前提に立つと、「ボッテガ風座布団」は、これが商品名であっても商品説明であっても、不正競争防止法上問題になる可能性がありそうです。

商標や著作物を利用しない場合

例えば「綾波レイ」はアニメキャラクターの名前であり、一般には商標でも商品等表示でもありません。当然この名称には著作物性もないでしょう。なので、このような名称自体は、自由に使って構いません。「綾波レイ風」とするのも問題ありません。

商品自体に問題がない場合、「綾波レイ風」のように、商標でも著作物でもない名称を使用することでは、知的財産権侵害にはなりません(注:本当に「綾波レイ」の商標登録や防護標章登録がないかは都度確認する必要がある点にご注意ください)。

こうしたケースはあまり想定されないかもしれませんが、例えば普通のクロネコのキーホルダーを「クロネコジジ風」などとして販売することが考えられます。

まとめ

ノーブランド品は顧客吸引力が弱いので、顧客吸引力の強いブランドを利用ようと考えることがあります。しかし今回見てきたように、多くの場合そうした行為は禁止されています。

そもそも利用しようとするブランドは当然有名なものでしょうが(そうでなければ利用する価値がない)、有名な名称等は様々な法律で保護されています。特にネット販売の場合はいかに検索に引っ掛けるかが売り上げに直結するので、なんとか顧客吸引力のあるキーワードを入れようとすることが多いです。しかしそうした行為は違法の可能性があります。販売前に専門家に相談されることをお勧めします。

今回は概論として全体像を見たため、細かい検討ができませんでした。今後機会があれば各論を検討したいと思います。特に検討をご希望される項目があれば、お気軽にリクエストしてください。

LINEで送る
[`evernote` not found]
Pocket