税関に行ってきました

先日、東京税関に行ってきました。

輸入差止申立制度を利用するにあたり、税関職員の方と事前相談をするためです。

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特許権や商標権などの知的財産権が侵害されている物品(いわゆる偽物・模倣品)を輸入することは、密輸にあたります。税関では密輸を阻止すべく日々努力していますが、すべての貨物を開封して検査することは到底不可能ですし、仮に全品検査するにしても、毎年何十万件も発生しては消えていく様々な知的財産権の内容をすべて把握して知的財産権を侵害するかどうか判断することも当然不可能です。

そこで予め権利内容と侵害品や侵害者の情報を税関に提供し、効率よく差し止めてもらうことができます。この制度を、輸入差止申立制度といいます。

輸入差止申立制度を利用するには、税関に対して輸入差止申立書を提出します。そして税関では、申立書の作成段階で、申告内容について事前に相談に乗ってくれます。権利内容本物・偽物の識別ポイント具体的な侵害状況想定される輸入ルートなどを、税関の知的財産調査官に直接説明し、差し止めしやすい申告書の作成方法について対面で相談することができます。

今回私が伺った際には本件のご担当調査官及び調査部長を含め、計5人もの調査官が参席してくださいました。いかに税関が知的財産権侵害物品の差し止めに力を入れているかが伺えます。


逆にいうと、どのような内容を税関に提供するかによって、水際差止の効率が大きく変わってきます。実際、空輸であれコンテナ輸送であれ、貨物の開封検査は例外中の例外です。日本の輸入許可は輸入申告書の記載に基いて行われ、貨物の検査を経ることは通常はありません。例外的に検査必要と認められた貨物のみが検査されるのですが、どの貨物を検査するかはすべてコンピュータが決めています。

このコンピュータの内容はほとんどが非公開なのですが、かなり高性能なものだと言われています。様々な情報から複合的に判断し、貨物ごとに「検査なし」「書類審査」「開封検査」のいずれかに振り分けるそうです。例えば輸入者が過去に密輸の前科がある場合や、コンテナですと混載種類が多い場合、そして当然輸入差止申立書に記載されている輸入者は、検査の確率が高くなります。

税関への輸入差止申立をするということは、いかにしてこうした検査に引っかからせるかという作業に他なりません。輸入差止申立書に権利内容のみを記載して提出しても、ほとんど実効性はありません。特に空輸で複数の輸入者がパラパラ入れてくる場合は、どれだけ侵害情報を提供できるかで、輸入差止の実効性に大きく影響します。


そのときに、輸入者の情報を提供するのはもちろん有効ですが、それに加えて輸出者の情報を提供したほうが有効的な場合が多いです。偽物の流通は下流に行くほど枝分かれしてしまい、対応に手間とコストが掛かるようになるので、「偽物は上流で叩く」のが基本です。そうすると、例えば偽物がアマゾンで販売されているときに、各出品者に対して手続きするよりもプラットフォームであるアマゾンに対して手続きする方が効率がいい場合が多いですし、アマゾンに対してよりも輸入される段階で止めたほうが効率がいいです。そして更に輸出者レベルでまとめて止めたほうが効率がいいですし、その上流では輸出者の仕入先である小売店や卸売店、更には工場で型を潰してしまうのが最も効率がいいということになります。

しかし一般には上流に行くほど手間とコストが掛かるので、それぞれの段階をうまく組み合わせて全体として効率よく偽物の輸入・販売を差し止める必要があります。こうした対策は、模倣品対策の全体像を十分に把握している専門家のアドバイスに従ったほうが、トータルで安く済みます。


輸出者の情報提供をする意義
近年増えているインターネットでの偽物販売に関しては、中国内で様々な流通経路・流通段階にある商品を、代行業者が購入し、商品を取りまとめてから各輸入者宛に輸出する態様が一般的です。つまり偽物は一度代行業者に集まるので、代行業者レベルで押さえられれば効率よく偽物対策ができます。
ネット販売における偽物流通経路の模式図(クリックで拡大)
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しかし、日本の特許法や商標法などでは、中国における輸出者の違法性は問えません。日本の法律は日本国内のみで有効なので、中国での違法行為は日本では違法性を問えないのです。

ご存知のように中国での輸出通関はザルですから(※中国では事前に税関に登録した権利でないと偽物であっても輸出段階で止まりません)、輸出業者は堂々と偽物を日本に輸出して商売をしています。

このように中国での輸出代行業者の違法行為は止められないため、税関に輸出者の情報を提供できるということは、こうした輸出業者の貨物を水際で止められ得る数少ない、貴重な機会を得ることを意味します。特に小口輸入者の商品を取りまとめて輸出している代行業者の存在が日本での模倣品蔓延の元凶になっているため、こうした業者の違法行為に対応できる可能性がある点でも、税関での輸入差止は大きな意義があるといえます。

端的にいうと、輸出代行業者は、「偽物は下流に行くほど枝分かれする」という原則の数少ない例外なので、ここを叩くのが手間やコストの観点から効率がいいのです。おそらく最近のインターネット販売における偽物を最も効率よく減らす方法は、こうした輸出代行業者の貨物を税関で止めることだと思われます。もちろん輸入者ごとに止めるのが王道ではありますが、そのひとつ上の段階である輸出代行業者単位で貨物を止めるという視点は、今後の偽物対策の鍵になっていくでしょう。

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