特許異議申立制度が復活しました

平成15年までは、日本の特許法には、商標法と同じように異議申立制度がありました。特許権の成立は公益に影響するため、審査官の判断の是非を広く世に問う目的でした。

ところが、異議申立をして失敗した場合に別途無効審判を請求する事例が多くあったため、権利者に大きな負担を強いることとなっており、かつ権利の安定性を過度に損なうという側面がありました。また、申立人には異議申立後に意見を述べる機会が設けられておらず、無効審判に比べて使い勝手が悪いという指摘もありました。そこで、平成15年の特許法改正で特許異議申立制度は廃止され、無効審判に一本化されました。

しかし、いざ無効審判に一本化されると、今度は逆に無効審判のデメリットが目立つようになりました。例えば、無効審判は原則口頭審理なため、当事者にとって負担がかなり大きいです(口頭審理は本当に大変です。機会があればどれだけ準備が大変で当日神経をすり減らすかご紹介します。)。また、無効審判は登録後であればいつでも、権利消滅後にさえ未来永劫請求でき、特許権者にとっては手間やコストの観点から負担が大きいという点も問題視されていました。そこで、昨年米国で特許異議申立制度が導入されたことに後押しされる形で、日本でも本制度を復活させることとしました。

今回復活した特許異議申立制度も、基本的にはかつてのものと同じです。ですが一部異なる部分もあります。これらを少し詳しく見ていきます。

■ 旧制度と共通の内容
1.申立人適格
何人も申立可能です。つまり自然人又は法人であれば、誰でも異議申立できます。公益的な観点から審査官の判断の是非を広く世に問う趣旨だからです。なお、権利能力なき社団も、代表者の定めがあれば、異議申立できます。

2.請求期間
特許公報の発行日から6月以内に限り、異議申立可能です。あまりに長い期間認めると権利が不安定になってしまうからです。

3.申立理由
公益的理由に限られています(新規性、進歩性、新規事項の追加、記載要件違反など)。冒認出願や共同出願違反などの権利の帰属に関するものは異議申立理由に挙がっていないので、無効審判で争う必要があります。

4.申立の単位
請求項ごとに申立可能です。なお、取り下げも請求項単位で可能です。

5.職権審理の可否
審判官は、申立しない理由についても審理可能ですが、申立されていない請求項について審理することはできません。

6.特許権者の対応
取消理由通知に対して、意見書及び/又は訂正請求書を提出することができます。意見書(訂正請求書)提出可能期間は、取消理由通知の発送から60日(在外者は90日)です。
複数回の訂正請求があった場合は、最新のものが採用され、先の訂正請求は取下げられたものとみなされます。この場合に、訂正の基礎となる明細書等は、設定登録時のものです。


■ 旧制度から変更となった内容
1.審理方式
書面審理のみ。旧制度では希望すれば口頭審理が認められることもありましたが、新制度ではすべて書面審理となります。ただし、希望すれば審判官との面接は認められるようです。

2.申立書の要旨変更補正
取消理由通知があった後は、要旨変更となる補正はできません。旧制度では、異議申立期間内であれば、要旨変更補正が認められていました。(要は要旨変更補正ができる期間が短くなりました。)

3.訂正請求があった場合の申立人の反論
特許権者が訂正の請求により特許請求の範囲を減縮した場合には、減縮された特許請求の範囲に対して意見を述べる機会が与えられます(取消理由通知の送付から30日(在外者は50日))。
旧制度ではこのような機会はなく、特許庁と特許権者のやりとりのみで審理が完結してしまっていました。

4.申立に要する費用
特許庁印紙代: 16,500円 + 2,400円×請求項数
弊所手数料:  250,000円 (+6,500円/追加請求項) + 150,000円 (+6,500円/追加請求項)(as成功報酬)
旧制度では、特許庁印紙代は 8,700円 + 1,000円×請求項数 だったので、約2倍に値上がりしたことになります(なお、弊所手数料は初期手数料を2万円、成功報酬額を12万円値引き致しました)。



異議申立制度が復活したことにより、競合他社の特許を潰す重要な機会がひとつ増えたことになります。

今後は、

  1. 審査段階での情報提供
  2. 権利付与後の情報提供
  3. 異議申立
  4. 無効審判
という選択肢の組み合わせで、特許を特許を潰す/維持する攻防が繰り広げられることになります。

異議申立は、基本的に特許庁と特許権者の間で手続きが進むため、他社の権利を潰したい場合には手間やコストの面で無効審判よりもかなり有利です。請求人適格に制限がない点も大きなメリットでしょう。このため、資金や人員を十分に割けない中小企業や個人にとって、自己の業務の安定のための強力なツールとなると思われます。

一方で、異議申立期間が限られているため、気が付いた頃には既に申立できないという事態もあり得るでしょう。競合他社の特許が成立したことを誰かが通知してくれるわけではないので、知らない間に重要な特許が成立していて、慌てて異議申立しようとしてももう申立期間が過ぎているということは十分考えられます。あるいは、異議申立しても登録維持の結論が出されることも当然あるでしょう。このような場合は無効審判で争うことになりますが、そのぶんコストが掛かりますし(ダブルで掛かる上に無効審判の方が高い)、無効審判は利害関係人しか請求できなくなったため、単に「競合他社の特許を潰したい」というケースでは請求できないことが多くなると予測されます。つまり、これまでは無効審判で争っていたケースも、今後は限られた期間で、異議申立一本で争わざるを得ないものがたくさん出てくるのです。

このような事態に備えて、出願段階から競合他社の特許出願情報をチェックし、出願状況をウォッチしておくことが重要になってきます。弊所ではそのような他人の特許出願を探しすお手伝い、そして、審査状況を定期的にモニターしてご報告するサービスを提供しておりますので、是非お気軽にお問い合せください。

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